とあるレンジャーの休日

19

 
 自分の部屋に入ろうとする紫乃を、歩はドアのところで後ろから掴まえる。
 腕を取られ、紫乃はハッとして振り返った。

「何?」

「紫乃――」

 腕を引かれ、強引に抱きしめられた。
 紫乃は驚き、咄嗟に腕を突っ張ろうとする。
 だが、歩は強い力で逃がさず、彼女の背中を撫でた。
 紫乃は混乱し、戸惑いながら言う。

「着替えるから、離して」

「ダメ。そんな泣きそうな顔と声で言われても、聞けない」

「泣いたりなんか……」

 でもその言葉自体が、涙で詰まった。

――泣きたくなんかないのに。
 彼の温かい腕と、背中を撫でられる感触。
 慰めようとする彼の気持ちが直に伝わってきて、紫乃の涙腺は勝手に緩んだ。

「や……見ないで」

「紫乃」

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