とあるレンジャーの休日
02
医務室に戻ってドアを開けると、カーテンの向こう側から話し声がした。
一人は薫子で、もう一人は――
「あれ? もう目が覚めたの?」
紫乃がカーテンの隙間から中を覗くと、ベッドで上半身を起こした彼が、こちらを見て目を丸くした。
そしてすぐ申し訳なさそうな表情に変わり、頭を下げて言う。
「さっきは、すみませんでした。手、払っちゃって」
「ううん、別に。少しはスッキリした?」
そう訊ねたら、彼は無邪気な顔で笑った。
「はい。これ、すごいっすね。身体ん中一気に血が巡った感じ」
彼が『これ』と言って指差したのは、点滴台に下げてある輸液の袋だ。
紫乃もクスッと笑い、肩をすくめる。
「ただの食塩水だけどね。二日酔いにも効くよ」
「そうなんだ。あっ、塚本さん」
紫乃の背後から顔を出した塚本に、彼はまた頭を下げる。