とあるレンジャーの休日
なぜか彼を相手にすると、強がりが続かず、意地も張りっぱなしにすることが出来ない。
最初は、彼を自宅で預かることが少しでも助けになるなら、それだけでいいと思っていた。
でも、歩に甘えられると、どうしても面倒をみずにはいられなくなる。
そうすることが、紫乃も楽しかったからだ。
だから歩には自然と素のままに接し、いつの間にか心を許していた。
そしてなにより、彼から「好きだ」と言われたことが大きい。
紫乃は心のどこかで、みっともなく泣いてすがっても、彼はきっと許してくれるだろうと考えていた。
(甘えてるんだ、私)
紫乃は、自分が彼を甘やかしているつもりで、実は逆なのだということに気付き、なんとなく恥ずかしさを感じた。
「落ち着いた?」
優しい口調で訊ねられ、紫乃は目を逸らしながら頷く。
歩は紫乃の肩をポンと叩いて回していた腕を解いた。
「じいちゃんは大先輩なんだから、紫乃が気付かなくても仕方ない。今から頑張って助けてやればいいと思うし」
そう言われ、紫乃は驚く。
歩は、彼女が泣いた理由を、何も言わずとも正確に理解していた。