とあるレンジャーの休日

 歩が何かを発見して、声を上げる。
 指差している先には、タレに浸かったジンギスカンの密閉パック。

「ジンギスカン、好きなの?」

「うん。北海道で演習終わった後に食べたら、すっげー美味かった!」

 紫乃は、そういえばと思い出した。
 北海道は広いだけあって、規模の大きな演習場が多い。
 北部方面隊に限らず、全国から訓練のために各部隊が演習場へ出向く。
 雪中訓練や、パラシュート降下での作戦展開など、演習場所が限られる訓練は多い。

「ねえ、それなら味付きは高いから、こっちにしない?」

 紫乃が生ラム肉のパックを差すと、歩はニコニコしながら頷いた。

「美味ければ、何でもいいよ」

「一番難しい要求だね、それ」

 紫乃は苦笑しながらラム肉のパックをカゴに入れ、次にもやしを探すため、野菜売り場に向かった。

「歩は、食べられないものってあるの?」

「ないよ。蛇や蛙も余裕でいける」

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