とあるレンジャーの休日

「蛇……?」

 さすがにスーパーでは売っていない食材だ。
 歩は紫乃の引きつった顔を見て、おかしそうに笑った。

「山で自生してる植物とか、動物を狩って食べる訓練があるんだよ」

「ああ。聞いたことある」

 レンジャー課程が厳しいと言われる所以の一つだ。
 生存自活、つまり山中において食糧がなくなったことを想定して行われる、サバイバル訓練のことである。

「食べるのに、抵抗なかった?」

「全然平気。食えるものなら、なんでも」

 そう言われると、なかなか複雑な気分だった。
――毎日の食事を提供している身としては。

 彼女の表情を読んだのか、歩が慌てて付け足した。

「紫乃のごはんは、すげえ美味いよ!」

「そう? まあ、食べられないものは出してないからね」

「本当だってば!」

 必死に訴える彼の様子が面白くて、紫乃はつい笑ってしまう。
 そこへ、見知った顔が近づいてきて、紫乃は目を見開いた。

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