とあるレンジャーの休日
「ハルくん家のおばさん!」
「紫乃ちゃん、久しぶりねえ」
道場の向かい二軒隣に住む、宗春の母親である。
「こんにちは」
軽く頭を下げる歩を見て、坂下のおばさんは微妙な表情を浮かべた。
「居候してる男の子って、あなたかしら? 紫乃ちゃんと仲がいいのねえ」
察しのいい彼は、彼女が宗春の母親だとすぐに気付いたようだ。
「宮園歩です。ハルさんにも、道場でお世話になってます」
歩の礼儀正しい挨拶に虚を突かれたのか、おばさんは戸惑い気味に頷いた。
「まあ……思ってたより、さわやかと言うか、かわいいのね」
紫乃が窺い見ると、歩はここぞとばかりに笑顔を作り、その整った顔立ちをフル活用していた。
心配になった紫乃が、「居候って、そんなに噂になってますか?」と訊くと、彼女は首を傾げる。