とあるレンジャーの休日

「せっかくの初デートだし……今だけは、俺のこと考えててよ」

「歩のこと?」

 紫乃が軽く動揺を見せると、歩は彼女の手を取り、指を絡めながらそれを握ってきた。
――その感触に、ドキリとする。

「本屋のは散歩だから、ちゃんとしたデートは初めてだろ」

「やたらとデートを強調するね」

 紫乃が照れくさいのを誤魔化すように言ったら、歩は笑った。

「まずは意識してもらわないと、始まらないからさ」

 紫乃は恥ずかしさと緊張、そして戸惑いが混じった複雑な表情を浮かべる。

(意識は、してるけど)

 ここ数日のめまぐるしさは異常なほどだ。
 でもそんな中、いつ負担になってもおかしくないはずの歩の存在に、紫乃は随分助けられている。

 恋愛事など、今の自分には面倒で負担を感じる最たるものだと思っていた。
 だが、彼はあまり負の部分を感じさせない。
 多分それは、あまりに近い場所にいるせいで――

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