とあるレンジャーの休日

「迷惑かけて、すみませんでした」

 一眠りする前とは別人かと思うほど元気だ。
 彼が寝ていたのは、ほんの一時間程度。
 にもかかわらず、脅威の回復力だと思う。

 感心する紫乃の横で、塚本が人当たりの良い笑顔を浮かべて言った。

「宮園(みやぞの)。今日から君は、ここにいる紫乃先生の家に泊まること。話はつけといたから」

(宮園……?)

 紫乃は自然とベッドの上にいる彼の方を見る。
 すると彼もまた、紫乃の顔を見上げて呟いた。

「しの先生?」

 そういえば、互いに名前も知らなかったと気付き、紫乃は頷いて見せる。

「戸ヶ崎紫乃、だよ。君は?」

「宮園歩(あゆむ)、です」

 顔だけでなく名前も可愛いのかと紫乃は思った。
 だが、さすがにそれを口に出したりはしない。

 彼――歩は、戸惑いも露わに、塚本の方を見た。

< 21 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop