とあるレンジャーの休日

(私じゃ、重荷にしかなれない)

「紫乃……?」

 歩の表情が不安げなものに変わった。
 彼は本当に細かくこちらの表情を読む。

 紫乃は慌てて笑顔を浮かべ、努めて明るい声を出した。

「お昼ごはん、どうしようか。何が食べたい?」

「んー、俺に選ばせると絶対肉になるよ。今日の夜はジンギスカンだから、パスタとかは?」

「いいね」

(この時間だけ……)

 歩にも言われたように、今だけは彼のことを考えていよう。
 それ以上は、もう――

 そう思い、紫乃は暗い気持ちを頭の片隅へと追いやった。






 店を探すため、二人は手をつないだまま、モールの中にあるレストラン街へと向かう。
 日曜だけに、家族連れが多い。

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