とあるレンジャーの休日
一階に飲食店が並ぶ通りがあり、そこの入口にあるタッチパネル式の電子案内板を見ていたら、歩が叫んだ。
「紫乃、これ見て! クライミングジムって書いてある!」
「クライミング……?」
どんなレストランかと思い画面を覗いたら、彼は興奮しながら忙しなくタップして、店の詳細を開いた。
見ると、それはレストランではなく、何かのアトラクションのようだ。
「二階吹き抜けだって! 行きたい行きたい行きたいっ」
歩の顔がすぐ目の前まで迫ってきて、紫乃は勢いに圧され、反射的に後ろへ下がった。
「わかった、わかったから! 何があるの?」
「ボルダリングだよ。食べたらすぐに行こう!」
彼は嬉しそうにその場で跳ね、弾むような足取りで先に行ってしまう。
その後を、紫乃は慌てて追いかけた。
全国にチェーン展開しているイタリアンの店を選び、二人は店奥のテーブル席に着く。
メニューを見ながらも、歩がウキウキしているのが分かり、紫乃は苦笑した。