とあるレンジャーの休日
歩のお目当てになったクライミングジムは、子どもや初心者から上級者まで対応した、かなり大型で本格的な施設だった。
ショッピングモールの端っこにあり、モール二階分の高さがあるドームになっている。
中の三面は専用の壁で、カラフルで色々な形状の突起が、あちこちに沢山ついていた。
入口を入った途端、歩は目をキラキラさせて「うお~っ!」と叫ぶ。
「めっちゃ楽しそう! ヤバい!」
受付で、ジムのトレーナーから習熟度を訊かれる。
「一番向こうがいい」
歩は、そう答えて奥のほとんど人がいない壁を指した。
そこは壁の表面が直線的な上、手前に大きく前傾しており、突起は丸くて極端に数が少ない。
紫乃は思わず顔をしかめた。
(あそこを登るの……?)
すると、紫乃だけでなくトレーナーの男性も、微妙な表情を浮かべた。
「君、経験者? あれは、上級者向けだよ。コンペ用なんだ」