とあるレンジャーの休日

「大丈夫。出来るよ」

 トレーナーは苦笑いを浮かべ、「取りあえず、腕前を見せてもらってからでいいかな」と妥協案を出した。
 歩も異存はないようで、素直に頷く。

「わかった。じゃあ真ん中あたりで、ひとまず登らせて」

 シューズだけ借りて、歩は上着を脱ぎ、紺色のTシャツ一枚になった。
 今日着ているのは、身体のラインにピタリと沿ったシャツで、そのシルエットを目にした途端、紫乃は息を呑む。

(わ……どうしよう)

 彼の後ろ姿から、目を離せない。
 肩の三角筋から棘下筋、上腕三頭筋も――あまりの美しさにうっとりしてしまう。

 だが、目を見張ったのは紫乃だけではなかった。
 トレーナーも、歩の身体つきを見て、彼が素人ではないことが、すぐに分かったようだ。

「いい身体してるね。良かったら、足も見せてくれない?」

 歩が穿いているのは、柔らかいストレッチ素材のテーパードパンツだ。
 彼は頼まれるまま、パンツの裾を膝下まで捲り上げた。

「うわ、すごい。君、何してる人?」

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