とあるレンジャーの休日
先にトライしていた二人も、少し下がった所で歩を見守る。
彼は二人がスタートに利用していた突起ではなく、その斜め上にある片手くらいの大きさの物にジャンプして飛びついた。
その跳躍力もさることながら、彼はぶら下がった身体を捻るようにして、手の位置の斜め下にある突起に片足を掛ける。
そうして、いとも容易く、更にその上の突起に手を伸ばしていった。
大きく前傾している壁でも、彼は普通に登っていく。
だが紫乃の目には、歩の筋肉と関節の柔軟な動きしか映っていなかった。
「すげえ」
「なんでそこに届くの?」
歩のトライを見ていた先の二人も、呆然としている。
そしてそれは、トレーナーの彼も同じだった。
歩は、身体を柔軟に縮めては伸び上がるのをパッパと繰り返していった。
その速さとダイナミックさに気付いた他の施設利用者やトレーナーが皆、動きを止めて歩に注目する。
あっという間に一番上まで登りつめた彼は、頂上の出っ張り部分にぶら下がり、こちらを見下ろした。
「どうだった? 紫乃!」