とあるレンジャーの休日
「俺が紫乃先生の家って、マズくないですか」
「何が? まさか君、紫乃ちゃんに何かするつもり?」
塚本の返しに、歩は顔をしかめる。
「そういうことじゃなくてっ……」
紫乃と薫子は目を見合わせ、揃って歩に同情の視線を向けた。
塚本という男は、こうやって人を煙に巻くのが大好きなのだ。
紫乃は不本意ながら、塚本ではなく歩のために、補足してやった。
「うち、おじいちゃんと父さんもいるから。それに、すっごく古いけど一軒家なの。一人一部屋使えるよ」
それを聞いた途端、歩の顔つきが変わった。
「一人部屋……?」
紫乃はおかしくなり、フッと笑みを漏らす。
歩は恐らく独身で、自衛官に採用されてから、まだ営外に部屋を借りたことがないのだ。
ということは、ここ何年もずっと誰かと共同生活を送ってきている。
営内隊舎では、基本個室は与えられないからだ。