とあるレンジャーの休日
歩が驚くのと同時に、施設トレーナーが三人ほど近付いてきて、彼を取り囲んだ。
質問責めにあいながらも、彼は必死で紫乃のほうを振り返る。
「今の、どっち?」
――歩自身か、身体に、なのか。
彼はまだ、紫乃の嗜好を完全には理解しきれていない。
(マニアの愛は性癖と一緒なの)
紫乃にとっては、どちらも必要不可欠だ。
トレーナーたちとなんだかんだ楽しそうに話をしている彼を見ながら、紫乃はボソリと呟く。誰にも聞こえないほど、小さな声で。
「できれば、自覚したくなかったなぁ」
ツラくなるだけだと、分かっているのに――
次は上級向けにトライすると言う彼を見つめながら、紫乃は、泣いてしまいそうな気持ちを隠して、笑みを浮かべた。