とあるレンジャーの休日

 歩もさすがに疲れてきたのか、「腕がそろそろヤバイ」などと呟いている。

 ふと歩が顔を上げ、壁際のベンチに座っている紫乃に気付いて「あっ!」と声を上げた。
 急に顔色を変え、時計とこちらを交互に見て、焦った表情を浮かべる。

(さては、私の存在を完全に忘れてたな)

 紫乃は苦笑しながら、わざとらしく首を傾げた。

「紫乃……っ、ごめん!」

 慌てて駆け寄ってきた歩に、紫乃は笑いかける。

「大丈夫。私も楽しかったから」

 彼の言い訳が始まる前に先回りしてフォローを入れた。
 楽しかったのは本当だから、全然問題ないのだけれど。

「でも、結構待たせちゃったよね?」

「そんな大した時間じゃないでしょ」

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