とあるレンジャーの休日

 歩が眠れなくなったきっかけが、お兄さんの事故であることは間違いない。
 そして、お兄さんに言われた言葉も。

『何のために戦うのか考えろ』

 その答えが明確に掴めず、彼は悩み続けている。

 歩は微笑みを消して真顔に戻り、紫乃をジッと見つめた。

「いいけど……なんで?」

「なんでって、気になるから」

「なんで気になるの? どこが?」

 紫乃はむしろ、歩の反応のほうが気になった。

(それくらい、普通に教えてくれても良くない?)

 歩はなぜか頬を膨らませ、不機嫌そうな顔をしている。

「今日は俺のことだけ考えてって言ったのに……」

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