とあるレンジャーの休日

「うちは構わないよ。どうするかは、あなたが決めて」

 そう振ったら、歩はほんの少しだけ迷った後、再び紫乃を見上げて言った。

「お願いします」

――決断が早い。
 彼の反応を、紫乃は気に入った。
 そしてもう一つ、とても気に入ったことがある。

「おお……紫乃先生のお眼鏡にかなうとは。宮園くん、なかなかやるね」

 薫子が感心しながら、歩にそう声をかけた。

 歩は怪訝な表情を浮かべて、「お眼鏡?」と問い返す。

「紫乃先生はね、無類の筋骨好きだから。骨と筋肉にはうるさいよ~。愛しすぎて、整形外科医になっちゃうくらいだからね」

「こら、薫子! 人の本性をいきなりバラすな」

 紫乃は横にいる彼女を軽く睨みつけ、薫子はえへへと笑って誤魔化す。

 そう――先ほど塚本が言った通り、そういう視線で歩を見てみると、彼はなかなかに良いモノを持っていた。
 癖のない骨組みに、一切の無駄がない筋肉。
 ふとした動きにも、常時鍛えられている雰囲気が漂っている。
――これはたしかに、目の保養だ。

< 23 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop