とあるレンジャーの休日

 血がのぼり、よく回らない頭で、紫乃は必死にこの状況を脱しようと、もがき続ける。
 するとようやく少しだけ、歩の腕の力が緩んだ。

「じゃあ、誰もいないところに連れ込めばいいの?」

「そんなこと言ってないでしょ!」

 都合よく言質を取ろうとする歩を、紫乃はジッと睨みつける。
 彼は軽くため息を吐いて、腕を広げた。

「手強いなあ、紫乃は」

「歩は、時と場所を選ばなすぎでしょ!」

 すかさず反論すると、歩も不満げな顔をして返す。

「だって今日、デートじゃん。イチャイチャするのに、これ以上適した時、ある?」

「そっ、それは……」

 何か言いくるめられている気がしないでもない。

< 233 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop