とあるレンジャーの休日

「仕方ねぇな。じゃあ代わりにお前が付き合え、紫乃」

「は？　私？」

「俺の娘なんだから、少しは飲めるだろう」

　吾郎から酒を勧められるなんて、初めてのことだ。
　紫乃も家ではお酒を口にした記憶が無かった。

「でも私が飲んでたら、誰がお肉焼くの？」

「そりゃあ、お前……」

　自然と、全員の目が歩の方に向く。
　彼は途端にピッと背すじを伸ばし、「了解！　俺が焼きます！」と返事をした。

　紫乃は歩の隣で「そっちひっくり返して」とか「あ、焦げてる」とか「お肉もいいけど野菜も食べて」と、細かく口を出す。
　それを見ていた吾郎が、ビールの残りを紫乃のグラスに注ぎながら、呆れたように言った。

「紫乃。お前、いちいち細かいな。誰に似たんだ、それ」

「そう？　でも似てるとしたら父さんでしょ。母さんは……だいぶ大雑破な性格だし」