とあるレンジャーの休日
生まれ育った所なのに、もう〝自分の家〟じゃない。
兄にそう言ったら、『精神的に自立した証拠だ』と返された。
――本当にそうだろうか。
それなら、なぜ自分はこんなにも願っているのだろうか。
〝帰りたい〟と――
夢うつつを彷徨っているうちに、寝ている頭上から足音が聞こえてきて、吾郎の下腹に響く声が響いた。
「お? なんだ、どうした歩は」
「父さん、おはよう。ちょっと寝不足なの。少しだけ寝かせておいてあげて」
「なに、また眠れなくなっちまったのか?」
吾郎がダイニングの椅子にドカッと腰掛ける気配がする。
「お茶でいい?」
「ああ。しかし、こいつは何を悩んでんだかな」