とあるレンジャーの休日

 紫乃が了解しなければ、自分がここで世話になることはなかった。
 紫乃が「いいよ」と言ってくれたから、自分は今、ここにいられる――

「私は塚本から『目の保養になる』って言われたんだよね。それでつい……」

 続いて聞こえてきた紫乃の言葉に、歩は動かず目を閉じたまま、眉根を寄せた。

(目の保養?)

 吾郎が「顔か?」と尋ねると、紫乃は即座に否定した。

「違う。筋肉と骨格」

「身体目当てか」

 吾郎は冗談交じりにそう言って笑い、紫乃はこれ見よがしなため息を吐く。

 耳をそばだてていた歩は、ソファで脱力した。

(やっぱりそっちか)

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