とあるレンジャーの休日
そうやって小さい頃からずっと目標にしてきた兄が、突然目の前からいなくなったのだ。
いくら不屈の精神がモットーのレンジャーとはいえ、ショックは大きかったに違いない。
「少林寺と居合か。近接格闘の基本だね。うちの父さんが喜びそう」
「……紫乃先生の親父さん?」
意外そうに目を見開く歩に、紫乃は頷いてみせる。
「元自衛官で近接格闘術の講師をやってる。ここにも教えに来てるよ」
歩は相当ビックリした顔をして、紫乃の顔をマジマジ見つめた。
「そうなの?」
「うちに来たら、練習相手してあげて。強い相手に飢えてるから」
医務室の鍵を閉めて、敷地を出たところで薫子と別れる。
紫乃の家もそうだが、彼女もまた徒歩5分程度の場所に住んでいた。
並んで歩く帰り道、紫乃は歩から、怒涛の質問を浴びせられた。