とあるレンジャーの休日
(あれ? 起きてた……?)
顔を覗き込むと、うっすら目を開いた歩が、こちらを見てニコッと微笑む。
(やっぱり)
紫乃が掴まれたのとは反対の手で、彼の額をぺちっと叩いたら、歩は笑顔で手を離し、ようやく身体を起こした。
「あ〜、お腹空いた!」
「歩は寝不足でも、食欲だけは失わないね」
彼はへへっと笑い、大きく伸びをする。
「身体が資本だからね。紫乃に捨てられたら困るし」
「は?」
すぐ後ろに父がいるのに、なんてことを言うのだ。
紫乃は焦って吾郎の顔色を窺うが、特に気にした様子はなかった。
こっそり歩を睨みつける。
すると彼も吾郎に気付かれないよう意味深に笑って見せた。