とあるレンジャーの休日
「はあ?」
紫乃はまた驚いて、目を見張る。
抱えていた洗濯カゴを落としそうになり、焦った。
「紫乃がキスしてくれるだけで、なんでもやるよ、俺」
「何言って……バカじゃないの」
「嫌?」
そう聞かれ、紫乃はグッと答えに詰まりながらも、小さく首を横に振る。
「別に……嫌じゃない、けど」
それを見た歩が、なぜか真面目な顔をして言った。
「紫乃、本当にかわいい」
「は?」
「んじゃ、ハリきって行ってきます!」
俄然勢いを増し、玄関から駆け出して行った歩の後ろ姿を見送りながら、紫乃はもう一度「バカじゃないの」と小さく呟く。
カゴを抱え直して階段を上り、途中で足がもつれ転びそうになって、かなり焦った。