とあるレンジャーの休日

 中待合から受付横のカーテンをくぐって姿を現すと、不機嫌そうな年配の男性がこちらに気付いて振り返った。

「おまえか? 孫娘ってやつは……」

 パッと見は、50代後半から60に差しかかったところ。
 中年太りで腹周りがふっくらしており、肉づきは紫乃の基準からすると最悪の部類だ。

 紫乃は足を開いて立ち、目の前の男性を睨みつける。

「待合室ではお静かに」

 低めの声でぴしゃりと言い放つ。

 すると、男性はカチンときた様子でこめかみをピクリと震わせた。

「小娘が生意気に……誰に向かって口きいてんだ、てめぇ!」

 男性の迫力に周囲から「ひっ!」「ちょっと、警察っ」といった怯えの声が上がり始める。

 紫乃は彼を睨んで目を離さないまま、一歩ずつ近付いた。

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