とあるレンジャーの休日
「ここは病人の来る所だ。怒鳴る元気があるなら男性医師がいる別の病院に行って。今日はただでさえ忙しい」
静かな怒りを込めて怯まずに近付いてくる紫乃に、威嚇していた男性のほうが動揺して、後ろに一歩退く。
「帰って。ここで怒鳴られたら迷惑なんだよ。二度と来るな」
「こっの、生意気な……!」
男性が怒りに任せて右腕を振り上げ、殴りかかってきた。
見ていた患者たちの口から「きゃ!」「うわっ」と声が上がる。
紫乃は振り下ろされた右手の手首を狙い通りに掴むと、瞬間に関節を逆側へ捻った。
「いでぇっ! イダダダ……!」
「私は子どもの頃から合気道をやってる。そして専門は整形外科だ。身体中の関節と神経がどうなってて、どこをどうすれば痛みが走るのか、動かなくなるかを熟知している。ろくに鍛えてもいない身体で、簡単に太刀打ちできると思わない方がいいよ」