とあるレンジャーの休日
さらにグイッと捻ってやると、その男は「ぐおっ!」と呻き声を上げ、足をもつれさせて、床に転がった。
「離せっ……いてぇんだよっ! 医者が患者を怪我させていいと思ってんのかっ!?」
「怪我なんかさせてない。アンタの身体が痛みにビビって自分から転がっただけだ」
紫乃がそう言って手を離すと、男は悔しそうな顔で立ち上がり、警戒して後ろに下がった。
「医者のクセに……患者を選んでんじゃねえぞ!」
その言葉に、紫乃はフンと鼻を鳴らして返す。
「医者は患者を選べないけどね、優先順位は付けてもいいんだ。喧嘩を売れるほど元気で他に迷惑をかけるような奴は後回し。嫌ならさっさと帰りな!」
口でも一歩も引かない紫乃に、男は舌打ちをして、「面倒くせえ……これだから女は……」とブチブチ文句を言い、乱暴にドアを開けて外に出て行った。
紫乃はため息を吐き、受付の事務員を振り返って「あれ、おじいちゃんの患者?」と尋ねる。