とあるレンジャーの休日

 ぬるま湯のようだった心地よさが、いきなり熱いものに変わった。
 さらに深さを増したキスの感触と歩の熱に当てられて、紫乃は自分の身体が思ってもみなかった反応を示すのに驚く。
 歩の手が触れた箇所は熱くなり、ゾクゾクと甘い痺れが湧いてきた。
 それは、思考も理性も何もかも奪われてしまいそうなほど強烈な波で――

(ダメ、これ以上は……!)

 紫乃は再び腕に力を込め、歩の胸をグッと押した。
 唇は離れ、彼は驚いた様子で、こちらを見つめる。

「どうしたの? 何か、嫌だった?」

「そうじゃ、なくて……」

 紫乃はうつむき、なんと言い訳したらいいか、考えあぐねた。

(言えない。気持ちよすぎて困るだなんて)

 彼と一線を越えてしまうのは、怖い。
 それは行為に対する恐怖じゃなく、自分の気持ちの問題だ。

< 285 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop