とあるレンジャーの休日
今だって、好き過ぎるのに。
歩が大事で、愛おしくて、傍にいるだけで癒される。
なのに、彼はあと少しで遠くへ行ってしまうのだ。
歩がここを出たらきっと寂しくて、胸が詰まって苦しくて、張り裂けそうになるだろう。
それがわかっていて、でも付き合いを拒絶することが出来なかった。
(中途半端なのは、わかってる)
処女でもあるまいし、付き合うと決めたのに身体は許さないなんて、歩も戸惑うに違いない。
でも、これ以上溺れてしまうのは怖かった。
――本当に怖いのは、苦しみよりも、自分自身だ。
歩と離れた後、会いたくて堪らなくなった時に、ここから動くことの出来ない自分の境遇を重荷に感じてしまいそうで怖い。
頼りにしてくれる患者さんたち。
地域の人たちの期待。
祖父の診療所に父の道場。
薫子の存在。
家のこと、そして家族のこと。