とあるレンジャーの休日
(やっぱりダメだ、私……)
紫乃は、自分が恋愛においては、かなり重たい性質であるという自覚があった。
恋に落ちることが滅多にない分、一旦落ちるとドップリ嵌まってしまうのだ。
「やっぱ、疲れてるよな」
歩が気遣うように言って、紫乃の頬を撫でた。
「あと一回は、これで我慢しとく」
そう言って彼は頬に軽くキスをし、紫乃の身体を両腕でフワリと包むように抱きしめる。
「お疲れさま。頑張ったね、紫乃」
そんな優しい言葉と共に、背中をよしよしと撫でてくれた。
紫乃はふいに泣きたい気持ちになり、涙で滲みだした視界を払うように、黙ってジッとしたまま瞬きを繰り返す。
(ああ……もうダメだ)
手遅れのような気がした。
この手を離さなくてはならなくなった時、みっともないほど取り乱しグチャグチャになってしまう自分が、リアルに想像できる。
紫乃は、なんともやるせない気持ちになり、彼の腕の中でひっそりと細く長いため息を吐いた。