とあるレンジャーの休日
「その気になったらなったで構わないって言ってるのに」
「だから〜っ、頼むから誘惑しないで、紫乃。大事にしたいんだってば」
紫乃は苦笑しながら、歩の布団を整える。
彼がまた眠れなくなってしまったのは、紫乃にとっても頭が痛い事態だ。
体調が心配になるし、彼が部隊を休んでいられる期限も迫っている。
もし期限を過ぎても調子が戻らなければ、空挺団から所属を外され、どこかの普通科連隊へ異動になってしまうだろう。
もし、そうなったら――
(そんなこと考えたくない)
紫乃は眉根を寄せる。
歩が空挺団を外され、このまま今の駐屯地に異動になったら。
休日はもちろん平日でも、二人で会う時間を頻繁に作ることができるようになる。
一緒には暮らせなくても、今の状態に近い感じで傍にいることが可能かもしれない。
それは正直、紫乃にとってこの上なく望ましい状態だった。