とあるレンジャーの休日

「いいよ」

 ――それで、ちゃんと眠れるなら。

 紫乃が微笑むと、歩は迷うのを止めたのか、真面目な顔をして立ち上がった。

「わかった。ちょっと待ってて」

 彼は部屋を出て、隣の和室に入っていく。

 紫乃は、自分の鼓動が緩やかに速さを増していくのを感じた。

(どうせ手遅れなのは、変わらないし)

 一線を越えるのを躊躇う気持ちより、歩をなんとか眠らせたいという気持ちの方が大きかった。
 それに、彼とそうなることが嫌な訳では、決してないから――

 しばらくして戻ってきた歩の顔が、明らかに緊張していた。
 それを見て、紫乃は思わず笑ってしまう。

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