とあるレンジャーの休日
清二郎は静かに淡々と言葉を紡いだ。
「俺もトシだ。無理に手術をしたところで、余計苦しむ可能性の方が高い。進行を遅らせるにしても、投薬はかなりの負担だ。ここまで生きてこられただけでも充分だと思っている。後は痛みのコントロールさえできればいい」
それを聞き、今度は紫乃が顔色を変えた。
「おじいちゃん、まさか治療しないつもり?」
「ああ。俺は最期までここで医者として生きる。倒れるまで、できるだけ長くな。最後のわがままだ。許してくれ、紫乃」
その後、夜の部の診療を行うため、紫乃は診療所へ向かった。
その顔を見た薫子が青ざめて、本気で体調を心配する。
さすがにあの話を聞いたすぐ後に、患者をきちんと診れる精神状態には戻れず、結局夜の部は休診にしてしまった。
机に突っ伏して泣き出す紫乃を見て、薫子がオロオロしながら家に行き、歩を連れて戻ってきた。