とあるレンジャーの休日
「紫乃」
駆け寄ってきた歩に、紫乃は泣きながらしがみつく。
「どうしよう……守るって約束したのに、私……」
「紫乃……」
歩は何も言わず、ただギュッと強く紫乃の身体を抱きしめてきた。
紫乃がこれまで彼の腕の中で泣いた時と、全く同じように。
「何があったの?」
薫子が心配を通り越し、不安で仕方ない顔をしている。
涙が止まらない紫乃の代わりに、歩が清二郎のことを説明した。
「――松本先生が余命半年? もう手術できないってこと?」
「うん。じいちゃんはそう言ってた。治療はしないで痛みだけコントロールしながら、最期まで診療するって」
薫子は真剣な表情で紫乃の顔を覗き込み、紫乃が黙って頷くのを見て、ため息を吐いた。
「なんてこと……」