とあるレンジャーの休日

 自分が関わった患者には、なるべく最後まで付き合いたいと思う。
 それに、いくら一般的な疾患とはいえ、担当医がコロコロ変わることを不満に思う患者は多い。

 それを充分理解していながら、大学という巨大なシステムの中に身を置いていると、ただひたすら目の前に積まれていく業務をこなすので精一杯になる。
 診察、検査、手術に当直。研究や論文の作成。
 学会への出席。はたまた後輩の育成まで――

 だから紫乃は、祖父から申し出があった時、あまり迷わずに結論を出した。
 家計を支えるという意味でも、薄給のまま勤務医をやるよりは、たとえ規模は小さくても開業医の方が、実入りが良いのではないかと思えたのだ。

(とんだ勘違いだったけど――)

 膨れ上がるこの国の社会保障費のうち、三分の一以上を医療費が占めている。
 診療報酬も薬価も国にドンドン削られ、医療施設は儲けを出すどころか、借金をして必要最低限の設備を整えるだけで手一杯だ。

 幸い祖父の診療所の評判は良く、患者だけは途切れることなく来るため、今のところ大きな借金はなかった。
 ただ建物の老朽化は激しく、そろそろ限界が見え始めている。

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