とあるレンジャーの休日
その後、涙だけは止まった紫乃が薫子にもう少し病状を詳しく説明し、他の看護師たちには黙っていて欲しいと口止めする。
「彼女たちには、おじいちゃんが自分で説明すると思うから」
「了解です。じゃあ宮園くん。早く紫乃先生を連れて帰って休ませてあげて。ここ数日ずっと根詰めてたし、顔色悪いから。元々、そんなに丈夫じゃないんだよ」
歩は素直に頷くと、腕を引いて紫乃を立ち上がらせ、いつかのように身体を軽々と縦に担ぎ上げた。
「ひゃっ!」
「舌噛むなよ、紫乃」
「ちょっ、歩……下ろして!」
歩は「ヤダよ」と言いながら薫子に手を振り、紫乃を担いだまま家の方に戻っていく。
紫乃も途中で抵抗するのを諦め、歩の首にしがみついた。
階段はさすがに怖いと、その手前で下ろしてもらう。
一緒に二階へ上がりながら、歩が紫乃の顔を覗き込んで言った。
「ごめんな、紫乃」