とあるレンジャーの休日
27
朝、目覚めた時、歩は腕の中にいる紫乃が酷く疲れた顔をしているのに気付いて、胸が痛くなった。
泣きはらし、乾いた涙の跡が頬に残っている。
清二郎に言われた『余命半年』という言葉も、説明された病状も、やはり実感がないままだ。
にわかには信じられないというか、おそらく頭が理解するのを拒否しているのだろう。
ここに来て三日も過ぎる頃には、まるで第二の家族みたいに馴染んでいた歩には、清二郎の病気も紫乃の落ち込みも、他人事ではない。
かといって、本当の家族のようにかかわれるわけでもなく、そんな宙ぶらりんな自分の立ち位置をもどかしく感じた。
(いっそ本当の家族だったら、もっと……)
まだ目を閉じたままの紫乃の顔を見て、そう思う。
歩は身じろぎしないよう気を付けながら、カーテンの隙間に視線だけを向けた。
時間まではできるだけ起こしたくない。