とあるレンジャーの休日
朝食後、片付けと買い物を手伝った歩は、診療所へ向かう紫乃と清二郎を見送ってから、吾郎のいる道場へ足を向ける。
いつものように、黙々と防具を磨いている吾郎を見て、歩はバケツを手に取り、床板のぞうきんがけを始めた。
そんな歩の姿を横目に見つつ、吾郎は何も言わずに、ただひたすら防具を磨いている。
床掃除を終え、歩が汚れた水を捨ててぞうきんを絞っていたら、吾郎が話しかけてきた。
「今日はいいのか、紫乃についてなくて」
「……吾郎先生、紫乃のお母さんって、どこで働いてるんですか?」
「あ?」
意外な質問だったのか、吾郎は面食らった顔をした。
「いつまでとか、決まってないんですか? これからもずっと海外に?」
「なんだ、急に。特に決めてないと思うぞ。状況が許す限りだな」