とあるレンジャーの休日
仕事はまだしも、貯金や家族事情、結婚に踏み切れるだけの環境が整っているのかどうかを聞かれ、歩は急な話の流れにたじろぐ。
「俺はいいんですけど……紫乃が、なんて言うか」
「なんだ、まだプロポーズしてないのか」
吾郎の眉間にしわが寄る。
「だって先生、俺たちまだ出会って二週間ですよ!」
「それでも考えてはいるんだろう?」
「俺が一方的に、そうなったらいいなと思ってるだけで……」
まさか吾郎に、こんな普通に受け入れられると思わなかった。
歩は戸惑い、吾郎の顔を見上げて、その表情を窺う。
「たしかに、紫乃がその気にならなきゃ、どうにもならんな」
吾郎はそう呟いて背中を向けると、なぜかそのまま道場を出て行ってしまった。