とあるレンジャーの休日

(え……この状態で放置?)

 歩は訳が分からないまま、とりあえず道場の掃除を終わらせた。
 そして走るために外へ出る。
 吾郎のいない道場を勝手に使うわけにはいかないからだ。

(結局聞きたいこと、何にも聞けなかったな)

 歩は走りながら考えた。
 ――彼女を連れて部隊に戻るなら、そうできる環境を整えなくては無理だ。

 家事全般、駐屯地でのアルバイト、そして診療所。
 普通に考えれば、今の状態で紫乃がここを離れられる訳がない。

 そして自分もまた、今の部隊を辞めるつもりはなかった。
 他の仕事に就くことなど、これまで考えたことがないし、自分自身の能力を一番生かせる場所もあそこだと思っている。

 だがそうすると、二人が一緒にいられる手段が無くなってしまう。
 遠く離れ、なかなか会えなくなってしまうことがツラいと言った彼女を、どうやったら繋ぎ止めておけるのか――

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