とあるレンジャーの休日
午前中は仕事に行っていたからか、スーツを着たままの宗春は黙って頷くと、横に並んで歩き出した。
「何かあったの? なんか深刻な顔してるけど」
こんな風に改まって話をしたいだなんて、初めてのことだ。
彼と顔を合わせるのはいつも道場で、会えば常に笑顔で優しく迎えてくれるのだが。
「――吾郎先生から聞いたよ、清二郎先生のこと。この先何があるか分からないから、自分が居ない時には、もしかしたら教室のことを頼むかもしれないって」
「ああ」
父の吾郎は、ああ見えてかなり周到な性格をしている。
この先起こる様々な出来事を考慮して、何事も早め早めに準備を整えておくタイプだ。
「大丈夫? たぶん、紫乃ちゃんのショックが一番大きいんじゃないかと思ってさ」
紫乃は驚きに目を見張りつつ、礼を口にした。