とあるレンジャーの休日

 紫乃は一瞬固まり、でもすぐにそれが、『お礼』だということに気付く。

「あー、気持ちは嬉しいんだけど。別に裸じゃなくてもいいんだよね。どっちかといえば、動いてるところを見せてくれるほうが……」

「動いてるとこ?」

 目をパチクリとさせる歩に、紫乃は真面目な顔で頷いた。

「簡単に言うとね、骨を動かすには筋肉が重要で、筋肉を動かすには、神経の伝達が上手くいかないといけないわけ。五感から入ってきた情報を脳が処理して、神経を通じて指令を出す。それがいかに速く、誤差なく、滞りなく伝達されるかがポイントなの。歩の鍛え方と普段の動きを見てると、きっとそれがこの上なくスムーズに行くんだろうなと思って。想像しただけでこう、全身がゾクゾクとね――」

 そう言いながら、紫乃が何気なく歩の顔を見たら、彼は自分の腕や足を見ながら、首を傾げていた。

「それって、見ただけで分かんの?」

「ある程度はね」

「すげえな」

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