とあるレンジャーの休日




 隊舎が立ち並ぶ脇の歩道を抜けると、基地側との境壁の向こうに庁舎が見え始めた。

 居住区の奥には、厚生センターと名付けられた建物がある。
 紫乃のバイト先である医務室の他に、売店や食堂、理髪店、洗濯・乾燥室に娯楽室等々、およそここで生活するのに必要なものの全てが揃う、福利厚生施設だ。

 センターの自動扉入口から入り、正面には階段。
 その手前左右に伸びる廊下を左に曲がると、左手すぐのところが医務室受付だ。
 向かいの廊下には待合い用の長椅子が置いてある。

 そこには非番らしき私服姿の男性が一人。
 そして長椅子の奥に、訓練中に怪我をしたらしい迷彩服のズボンに黒いTシャツ姿の男性が顔をしかめながら座っていた。
 彼の左腕は泥と血にまみれた状態になっており、紫乃は「あらら」と声を漏らして、急ぎ医務室の扉を開けた。

 中はまだ暗く、いつもは早い看護師の米原薫子(まいばらかおるこ)も、まだ来ていないようである。

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