とあるレンジャーの休日
――完全に何かの術中にハマっている。
紫乃は劣勢を感じ、黙秘する方向に舵を切った。
「彼は、ああ見えて自衛官なんですよ。とっても鍛えられてるの」
「あら。じゃあ紫乃ちゃんの好みに近いんじゃない」
「そうなんですよ~。紫乃先生のお眼鏡にかなう男子は、貴重ですからねえ」
紫乃は黙ったまま、おばあちゃんの腕を取り、関節の具合を視認する。
彼女も慣れたもので、完全に薫子の方を見て会話しながら、肘や指をいつものようにクイクイっと動かしてみせた。
変わりが無さそうだったので、投薬内容はいつも通り。
おばあちゃんは新たな彼の情報と処方箋を手に入れ、ご機嫌な状態で帰っていった。
会計のために窓口に向かう薫子の後ろ姿を睨みながら、紫乃はため息を吐く。