とあるレンジャーの休日
それにしても彼女はなぜ、こんな無茶な要求をすんなり了承したのだろうか。
今日出会ったばかりの得体の知れない男を、自宅に招き入れるなど。
あまつさえ、歩に対し何かを要求することなく、衣食住を提供しようとしている。
歩が特に気になったのは、紫乃と塚本の関係だった。
彼女は憎まれ口を叩きまくっていたが、それも親しいからこそ、出来ることではないだろうか――
そんなことを考えていたら、先ほど着替えに行った祖父の清二郎が戻ってきた。
再び顔を合わせた二人は、互いをただ黙ってジッと見つめる。
先に口を開いたのは清二郎だ。
「……思っていたより若かったな」
「はい?」
なんの事か分からず、歩は首を捻る。
だが清二郎は気にせず、キッチンの方へ向かった。
そして冷蔵庫の扉を開けてから、歩を振り返る。
「手伝え、坊主。――ああ、名前はなんだった?」
「歩です」