とあるレンジャーの休日

 慌てて立ち上がり、歩は清二郎と共にキッチンに立った。
 とはいえ、調理は全て済んでおり、料理の乗った皿をそのままレンジで温めるだけになっている。

 清二郎は慣れた手つきで、ガスレンジに置かれた鍋に火を入れた。
 歩が覗くと、中には味噌汁が入っている。

「そこの引き出しに箸が入ってる。その上の棚に茶碗だ」

「はい」

 歩は言われるまま、箸や茶碗を揃え、炊飯器を見つけて白米をよそった。
 清二郎は一切無駄口を叩かず、静かにダイニングの席に着くと、両手を合わせる。
 最後に味噌汁を並べた歩も、清二郎の斜め向かいに座って、同じように手を合わせた。

「いただきます」

 黙々と箸をつける清二郎を見て、歩も料理の皿に目を落とした。
 肉とキャベツの味噌炒めに白菜の漬物。
 ポテトサラダに卵焼き。
 清二郎がタッパーのまま出して、ふたを開けたのは切り干し大根を煮たものである。

 それらの匂いで急激な空腹を覚えた歩は、まず味噌汁に口をつけてから、猛然とした勢いで食べ始めた。

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