とあるレンジャーの休日
まばゆい照明に目が慣れるのと同時に、中にいた者たちが歩に気付き、動きを止める。
「なんだ、お前は?」
清二郎に劣らない貫禄と、下腹に響く重い声。
重量のありそうな体格。
白い道着に黒の袴を身に着けている。
歩はふと、幼い頃に師事した居合の師範を思い出した。
「お疲れさまです。紫乃のじいちゃんに、身体動かしてこいと言われて来ました。ついでに、吾郎さんに飯を食えって」
紫乃の父親――戸ヶ崎吾郎は、不審げな表情を更にしかめて、歩を睨みつけた。
「お前が……?」
頭のてっぺんからつま先まで、それこそ舐めるように観察される。
歩は踵をそろえて背筋を伸ばし、頭を下げた。
「第1普通科大隊所属の宮園歩です」
「第1ってことは、空挺団か」
途端に吾郎の表情が変わった。
不審な者を見る目つきから、何かの期待が満ち溢れたものに。