とあるレンジャーの休日

 紫乃は廊下を振り返り、怪我をしている隊員を先に中へ招き入れた。
 もう一人の青年に「もう少しだけ待ってて」と声をかけると、彼は分かっていると言いたげな顔で、素直に頷いた。

 カーテンは閉めたまま電気を点けて部屋を明るくする。
 診察スペース兼処置室となっている部屋の中央には、机と丸椅子が二つ。

 荷物を置き、掛けてあった白衣に素早く袖を通した。
 怪我をした彼は、紫乃が指示する前にもう、患者用の丸椅子に座っている。

「それ、怪我した時のままだよね。衛生班は?」

 紫乃が訊ねると、彼はここに来て初めて口を開いた。

「傷口が大きいから医務室行けって。ちょうど先生が来る時間だし」

「それにしたって、水洗いくらい出来るでしょうが」

 彼の腕を取り、紫乃は傷口をマジマジ眺めた。
 まだ血は止まらず、だがそこまで深い傷ではないと判断する。

「とりあえず、そこの洗面台で傷口洗っといて。擦るんじゃなく流しとけばいいから」

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