とあるレンジャーの休日

「ぐっ、う……っ」

 大岩のような身体で体重を乗せられたら、ひとたまりもない。
 早々に観念して吾郎の腕をタップしたら、無理矢理止められていた呼吸が戻り、歩はむせながら畳の上を転がった。

「だが、素晴らしいスピードだ。こいつの最初の蹴りを見たか?」

 吾郎がそう問いかけたのは、いつの間にか子どもたちの背後に立っていた、見た目が三十代くらいの道着を付けた男だ。
 彼は静かに頷いて笑った。

「吾郎先生、目がキラキラしてますよ」

「ふん。しばらくは本気で遊べるな」

 歩は呼吸を整えながら身体を起こすと、「紫乃の父ちゃん、とんでもねーな」と呟いた。

 それを聞いた吾郎は得意げに笑ったが、なぜか後ろに立っていた男は顔色を変える。
 歩に駆け寄ってくると、彼のシャツの襟元を掴もうと手を伸ばしてきた。

「うわっ、なになになに――?」

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